楊聖廟

今年の6月、メタルバンド閃靈のボーカルであり台湾の立法委員である林昶佐がドイツメディアの取材を受けてその取材場所として選んだ廟です。ここは彼の地盤の萬華にあります。

この廟は1963年に完成した比較的新しい廟です。

新しい廟だけあり、彫刻も精緻で美しく、建物だけでも見どころです。

楊聖廟という名称通り、祀られているのは楊家将の人々です。

主祭神は楊聖祖文帝。楊氏隋朝を興した楊堅です。

そして、『隋書』では隋楊氏の祖先とされる東漢の硬骨漢・楊震。

それに楊家将3代の祖である楊令公=楊業。楊業の三男・楊延輝、楊業の六男・楊延昭が祀られます。楊堅と楊震のつながりは『隋書』などに記されるところですが、楊業と楊堅のつながりはおそらくありません。権威付けのためにいっしょに祀られているものと思われます。これは劉備が東漢景帝の末裔というのよりも不確かなものであるでしょう。

とはいえ、人気の楊家将に関連付けられて主祭神に祀り上げられているとは言っても、楊堅が主祭神である道教廟というのはかなりレアではないかと思われます。

配祀はまず保儀大夫。唐玄宗のころの武将張巡です。

その隣に忠惠聖侯。忠惠聖侯はどうやら五代十国の一つ閩国の初代王となった王審知という人物のようです。王審知は質素倹約に努め、税を軽くするなど善政を敷くとともに、当時未開の地であった閩のインフラ整備につとめ、文化的にも発展させたということで、福建には閩王徳政碑が建てられて今にいたるまで讃えられているとのこと。

その横にも保儀大夫が祀られます。ここには保儀大夫張巡が仕えた保儀尊王許遠は祀られていないようです。

そして保生大帝。

文昌帝君。

医神である保生大帝と、学問の神である文昌帝君は人気の神様なので配祀されているのではないかと思われます。

台湾の廟では実在の人物が主祭神でも特に関連性がない人気の神様が祀られるのはよく見られることです。