代天府聖恩宮

googleマップで、萬華にまだ行ったことがないところはないかと探して見つけた廟です。萬華の南はし、台北市と新北市を隔てる新店溪の近くにあります。99%の確率でこの廟を拜拜した日本人は私だけではないかと思えるほど観光客とは無縁の路地の一角にあります。

主祭神は三聖大帝。まったく聞いたことがない神様です。調べてみたところ、どうやら『楊家将演義』に登場する架空のキャラクター・楊宗保を神格化したもののようです。架空のキャラクターが神様として信仰されるのは、斉天大聖の例を持ち出すまでもなく道教や民間信仰ではよく見られること。そもそも太上老君など元ネタの人物がいる神様以外はだいたい架空の存在です。

楊宗保は、楊令公こと楊業の六男・楊延昭の息子。楊業と楊延昭は実在の人物です。楊宗保は、小説の中で楊業から数えて楊家三代目の当主となる人物で、あるいは奥さんの穆桂英のほうが有名かもしれません。自分より強い押しかけ女房いいよね。

三代目当主なので“三”聖大帝なのでしょうか?そのへんは一切不明。

代天府は、天帝より地上の悪霊などを討つ「代天巡狩」の勅命を受けた神様が祀られた廟。通常は王爺千歳などが主祭神とされるので、三聖大帝ももとはどうだったかは不明ですが、王爺としての職能を付与されている神様ではないかと思われます。

その前の神像がたぶん玄天上帝です。

その前にはどこでもいるよ中壇元帥。中壇元帥はインド神話のナラクーバラという元ネタの神様がいるとはいっても、そこからの影響として残っているのは托塔李天王の元ネタの毘沙門天の元ネタのクベーラの息子であるという設定のみ。あとのキャラクター性は中国で創作されたものなので、三聖大帝や斉天大聖とたいしてかわりません。

天醫大帝は、おそらくは台南の開基玉皇宮などに「天醫真人」として祀られる孫思邈のことだろうと思われます。孫思邈は実在の医師で、『千金要方』『千金翼方』などを著し、後世の中医学に強い影響を及ぼしました。

その前にも中壇元帥。

左側には福徳正神。

その前に虎ちゃん。虎ちゃんが祭壇の下ではなく上に乗せられているのは台北ではわりと珍しいです。

聖恩宮の正面には霞海城隍廟があります。関連施設なのかまったく別の運営なのかは不明。