艋舺善徳堂

台北で廟を探したかったら萬華に行くに限ります。なんのあてどもなく歩いているだけでそこらじゅうに廟があります。この善徳堂もまた、萬華をうろついているときに見つけました。そしてここは台湾の道教廟でもめずらしい神様を祀っていました。

廟を見つけるコツは、こうした門、あるいは提灯を探すことです。特に道の両脇に提灯が増えてきたらだいたいその近くには廟があると思って間違いありません。

この廟に祀られる神様を見たのは台湾ではここだけです。

なんと包公、つまり包拯です。

包拯は宋代の政治家。清廉な硬骨漢として知られ、宮中の贈収賄を摘発し、自らも決して賄賂を受け取らなかったといいます。その評判は民間にも伝わって「閻魔の包老」と呼ばれたとか。包拯の死後は、逆に十殿閻羅の閻魔王が包拯の生まれ変わりであるという設定まで作られました。その影響力の強さが伺いしれます。

包拯の人気は非常に高く、死後には『三侠五義』のような物語も作られるようになりました。中国では『三侠五義』をもとにした包拯が主人公のテレビドラマ『包青天』や『开封府传奇』(邦題:『開封府~北宋を包む青い天~』)が人気を博しています。

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道教では生前に功績があった人物が神様として祀られ顕彰されます。包拯もまた神様として信仰されるようになりました。その信仰は南方に伝わり、天帝から地上の悪霊・瘟神を取り締まる職務を委託された「代天巡狩」の職能を持つ王爺千歳の一柱として取り入れられています。この廟の包拯は、おそらくは王爺千歳の包府千歳として信仰されているものと思われます。

包公の右に祀られるのは、おそらく関聖帝君と天上聖母、手前に福徳正神など。

そして左には五営神将。

こちらは包拯の配下である王朝、馬漢、張龍、趙虎。生前捕吏であった彼らは、城隍廟や他の王爺廟における七爺八爺のような役割を持たされているのでしょう。

ところでここの2階には中壇元帥の廟もあります。入り口に李府千歳とあるのは中壇元帥李哪吒のことです。

ところが私が訪れたときにはドアが閉まって入れませんでした。