艋舺清水巌祖師廟

祖師廟正門

清水巌祖師廟は台北の中でも早い時期に発展した萬華地区にあります。

台北の観光名所ともなっている龍山寺から歩いて10分ほどの位置にあるにもかかわらず、観光客や地元信徒の参拝も途切れることがない龍山寺と比べて人が少なく、いつもひっそりした廟です。

しかし、ここは龍山寺と並び「台北の三大廟門」に数えられる名刹です。

また、三峽長福巖祖師廟淡水清水巖祖師廟瑞芳龍巖宮と並ぶ「大臺北四大祖師廟」の一つでもあります。

大台北は台北市と台北県を合わせた地域。

現在は台北県は廃止されて新北市になっています。

創建は1787年。1985年には国定史跡に指定されています。

正門から伸びる参道の両脇にはバラックのような店舗が建てられています。こちらは裏側で、祖師廟を挟むように走る長沙街と貴陽街側に入り口があります。中には住居になっているところもあるようです。

祖師廟の額

清水祖師

主祭神は清水祖師。清水祖師はもともと福建の安溪で信仰されていた民間信仰の神様でした。

清水祖師については諸説あり、陳昭応というお坊さんがインフラ整備に努めたために死後に信仰されるようになったとか、あるいは南宋の文天祥将軍についてモンゴルと戦った武人であったとかいろいろです。要するになんだかよくわかっていない神様です。出処がよくわかっていない神様は、その地域で道教という宗教が誕生する以前から信仰されていた神様に由来が後付けされる場合が多いです。

祖師廟扁額

私が祖師廟で注目したのは、まず梁に描かれた絵の多彩さ、美しさです。

このように梁に絵が描かれているのは道教の廟ではよく見られるもの。しかし、祖師廟は天井が低めなので鑑賞しやすく、また、他の廟よりも管理が行き渡っているように感じます。

道教廟の美しさは頭上にありと思うようになったのも、この廟を参拝したことがきっかけでした。

もう一つ、この廟にはこうした金色に塗られた彫刻が多いのも特徴です。彫刻の横には名前が彫られているので奉納品でしょう。縁起物以外に、中国の神話や歴史、小説などの一シーンに題を取ったものが彫られています。

中央にいる童子はおそらく風火輪に乗り火尖槍を持った??三太子。孫悟空の討伐という感じではないので『封神演義』の場面を描いたものだと思われます。『封神演義』は非常に人気がある物語で、よくこうした壁画などで取り上げられているのを見かけます。

こちらはおそらくは白額虎に乗った申公豹。しかし、申公豹にこんなゴムゴムな感じの能力があったでしょうか?

こちらにも??三太子。右にいるのは四不像に乗った姜子牙でしょう。四不像というのはこういう鹿っぽい生き物であって、日本の漫画に出てきたカバのような生き物ではありません。

こちらの題材は『三国演義』。中央に方天画戟を持った呂布、右に張飛、左に関羽。ということは左上はおそらく劉備です。

こうした彫刻は他にもたくさんあります。元ネタがわかるともっと楽しめます。

日曜日でも人が少ない廟なので、じっくり建築や彫刻などを見て回れます。

これは小さな香炉のデザインが気に入ってアップで撮ったものです。台湾人というのはよくも悪くも南国気質でいいかげん。「きっちりする」というのが苦手な国民性がありますが、こうした宗教にかかわるものはこれだけきっちり細かい仕事をしてきます。信仰の力というのはすごいです。

清水巌祖師廟は康定路沿いにあります。昔は近くに麒麟大飯店という日本人がよく利用するホテルがありましたが、なくなって以来このへんを通る日本人も減ってしまいましたね。