台中の街を廟めぐりしているとき、ある路地に入るとその先に大きな廟の屋根が見えました。屋根を目印に向かっていった先にあったのがこの靈聖宮です。
廟の側面に大きな関聖帝君の看板が出ていることから関帝廟であることがわかり、同時に恩主公とあることから、鸞堂恩主信仰の系統の廟であることがわかります。
鸞堂は「以儒為宗」。儒教を宗とすると掲げているものの、実際には道教の占い扶乩が発展したもので、どこからどう見ても道教だとしか思えません。
ただ、台湾総督府が陰湿なやり口で道教排斥を行なっていた日本時代、儒教を宗とするというタテマエの鸞堂信仰は総督府への目くらましとなり、広く信仰されるようになったようです。
孝感動天は儒教の徳目孝に関するショートストーリーを集めた二十四孝のうちの一つ。
舜が自分を虐げる継母にも孝を尽くし、それに感動した天帝が象さんや鳥たちを派遣して舜の畑仕事を手伝わせたというような内容です。
で、なぜかそこに関羽と関平、周倉将軍らしき姿。これは関羽が今の玉皇大帝を担当しているという設定に基づいたものだと思われます。
舜の時代に関羽も関平も周倉も生まれてねえっていうツッコミは神様の世界には無効です。太上老君も老子の時代より前に存在していたことになっています。
一階の中央に祀られるのは五恩主。
中央に関聖帝君、左右に孚佑帝君、文昌帝君、玄天上帝、司命真君。
台北の恩主信仰系の廟では、五恩主は文昌帝君と玄天上帝の代わりに武穆王岳飛、豁落靈官王天君が入っていることが多いです。
一階右には済公活仏。
左には福徳正神。
二階に上がると吹き抜けになっており、五恩主を見下ろせます。
その二階には、斗母元君と太歳星君。斗母元君の左右には南斗星君、北斗星君が配されます。
こちらは神農を中心に、保生大帝、華陀先師の医神コーナー。
反対側には東西南北中央財神。みんな顔は趙公明です。
そして三階へ。
玉皇大帝、太上老君、観音大士が祀られます。大士というのは仏祖と呼ぶより仏教寄りですね。
まれに道教廟にも祀られていることがある孔丘が祀られておらず、最上階の中央が玉皇大帝ですから、「以儒為宗」は本当にただのタテマエであることがわかります。
三階の左右にも北斗星君と南斗星君。
最後に廟の外の五營將軍。
外に祀られるのは別に低く見られたりしているわけではなく、防衛力として即応するために外にいないといけないからではないかと思います。