廣照宮

台北で道教の廟に行きたかったら萬華ほどふさわしいところはありません。探さなくても歩いているだけでそこかしこに廟があります。

廣照宮はそんな萬華の廟の中でも特別です。主祭神の飛天大聖は、台湾広しといえどもおそらくこの廟にしか祀られていない神様だと思われます。

廣照宮は萬華南部の青年公園の近くにあり、日本人はほとんど行かないような場所にあります。

廟の前は萬華の古い住宅地。

『水滸伝』に飛天大聖を二つ名とする李袞というキャラが登場します。百度で調べたところ、李袞の二つ名の飛天大聖はバラモン教から仏教に取り入れられた天龍八部の一柱ガンダルヴァであるようです。また、道教に飛天大聖という神様がいるようですが、廣照宮の飛天大聖とはまた別の神様であるようです。

廣照宮の公式サイトに飛天大聖について説明があったので訳します。

飛天大聖「張聖者」は宋太宗の太平興国年間に泉州餡系の大坪村に生まれました。ちょじて県衙の主簿となります。当時「呉真人」が神医として世に知られ、張聖者もそれに感化されて官を捨て呉真人に従いました。

仁宗明道2年(1033年)漳州泉州一帯に伝染病が流行。飢餓に瀕した人々が道にあふれました。呉真人と張聖者は遠方から食料を運び人々を救ったため、尊敬を集めます。

民間の伝説では仁宗は呉真人と張聖者を皇居に招いて母君を治療させたといいます。その軌跡は後々まで崇拝を集め、呉真人は「保生大帝」張聖者は「飛天大聖」となりました。

http://www.gjgtp.org.tw/About.aspx

呉真人は宋代の名医呉夲のこと。ただし、私が知る保生大帝の逸話、伝説にその弟子の張聖者なる人物は登場しません。

廣照宮によれば、1720年前後、つまり清代の康煕帝のころ、泉州の人が飛天大聖の分霊を受けて台湾に渡り、萬華に祀ったのが始まりとか。

今の廟ができたのは戦後のようです。

飛天大聖の前にずらっと中壇元帥軍団が並んでいるのが見えます。

もちろん中壇元帥が複数いるわけではありません。台湾では同じ神様の神像を複数並べて祀るのはよくあることです。

配神は文昌帝君。その前に魁星爺も祀られています。

趙公明を中心とした五路財神。

正殿の前には五營神將も祀られます。

祠の横の草は五營神將の騎馬が食べるまぐさ。ここに五營神將の軍団が駐留していることを表します。

2019年10月27日、廣照宮を蔡英文総統と萬華を地盤とする林昶佐立法委員が参拝し、台湾の平安と2020年の総統選、立法委員選での再選を祈願しました。