深坑集順廟

深坑は台北市の東南、木柵鉄観音の産地として知られる木柵に隣接する新北市の区の一つです。その中心となる深坑老街は現在は臭豆腐で有名ですが、もともとは老街に沿って流れる景美溪を利用し、山でとれる茶葉や樟脳などが集められた交易地として栄えました。その深坑老街の中心にあるのが深坑集順廟です。

深坑集順廟の創建は1838年。この地に移民した安渓出身の人たちが、度重なる疫病や原住民からの出草に悩み、それらを防ぐ守護神として景美に住む同郷の安渓人から保儀尊王、保儀大夫の分霊を受けて作られたようです。出草というのは原住民による首刈りのこと。台湾原住民の中には武勇の誉として、また刈った首から霊的な力を得られるとして首刈りをする部族もいました。漢人移民はそのターゲットとされていたようです。首刈りの風習は、日本時代に禁じられるまで続きました。

ということで主祭神は保儀尊王許遠、保儀大夫張巡の「雙忠」です。許遠と張巡は唐代の実在の人物。安史の乱のおりに?陽城を死守したことで忠臣としてたたえられ、後に神様として信仰されるようになりました。

台北ナビには集順廟が媽祖廟と書いてあるけれど、それは台北ナビによくあるリサーチ不足による大嘘です。こうやってちゃんと書いてあるのにね。

もっとも、主祭壇を見ると一見媽祖廟と勘違いしてしまうのも無理はないでしょう。一番奥の保儀尊王、保儀大夫の神像よりも、その手前の媽祖像のほうが大きいしいかにも主祭神然としています。この廟には、台湾各地の媽祖廟から分霊を受けた六尊の媽祖像が祀られているそうです。とはいえ、素人のブログじゃあるまいし、記事にするならちゃんと調べて書けといいたいですね。ここに私がしたり顔で書いてあることなんて、wiki見れば書いてあります。

媽祖の前はおそらく観音仏祖。そしてその前にはおなじみの中壇元帥です。

ずいぶんおっさんくさい顔の像。

すみっこのほうに五穀先帝神農。

神農は医薬の神であると同時に、その神名があらわすように五穀豊穣をもたらす農耕の神でもあります。そのため、神農が主祭神の廟は少ないとはいえ、あちこちの廟で神農像が祀られているのは目にします。

こちらにも天上聖母の神像。それに関聖帝君と、こちらも安渓人から信仰される清水祖師。

反対側には福徳正神。

主祭壇の下には虎ちゃん。

ここでは黒虎大将軍という御大層な神名です。同じ安渓からの移民がたてた萬隆集應廟でも虎爺が黒虎大将軍となっていたので、安渓ではそう呼ぶのかもしれません。