太陽廟

道教において最高神は元始天尊、霊宝天尊、道徳天尊の三清です。この三柱の神々は、この世の天地の法則そのものである「道」の化身であり、つまりは宇宙そのものの神格化です。このうち道徳天尊は太上老君=老子が神格化された神でもあります。ただ現在では太上老君は老子の神格化というよりは、老子が太上老君が人間として道を伝えるために地上に現れたものであるというように考えられます。

後に玉皇大帝への信仰が高まって、現在では玉皇大帝が道教の最高神とされ、本来の最高神であった三清はご隠居のような立場にされています。その玉皇大帝は天帝、即ち天界における皇帝であり、それは殷を滅ぼした遊牧民国家周が持っていた天への信仰が人格神になったものであるとも考えられます。

いずれにしても道教では宇宙や天そのものが最高神であって、太陽はその中に存在する要素の一つに過ぎません。ゆえに、太陽の神格化である太陽星君は天帝の配下の神で、玉皇大帝が祀られる廟ではその横に配されることが多いです。

そのため、太陽星君が主祭神とされる廟はめったにありません。私が訪れたことがある廟の中では、この内湖の太陽廟と、基隆の代明宮のみ。代明宮はもともとの主祭神であった三宝仏が消失したため主祭神に昇格しているといった状態なので、最初から太陽星君を主祭神としているのは、この廟のみということになります。

太陽廟は台北市郊外の内湖にあります。大湖公園の周囲をめぐるMRT内湖線の内湖駅を降り、山のほうへ向かって登っていくとこの牌楼があります。

山の斜面につくられたこの急勾配の階段を登っていきます。

階段の途中から廟が見えます。

天公炉からの眺めでけっこうな山中にあることがわかります。

この太陽廟はもともとはこの場所にあったわけではありませんでした。日本時代の1924年、李水来という道士が民生西路に太陽星君と太陰星君を祀る廟を建て、その後今の松山空港の場所に移設しています。ところが1935年、松山空港を建設するために立ち退きをさせられました。空港に限らず、港湾、道路などの公共事業のために廟が立ち退きをさせられたというのはよく聞く話です。通常は泣き寝入りで、信徒がお金を集めて別の場所に再建したりしています。

ところがこの廟の信徒は泣き寝入りせず、台北洲知事に対して争議を起こしました。よほど強力な抗議があったのか、内湖の現在の場所に再建を許され建てられたのが現在の太陽廟です。

正殿前の祭壇には諸神が祀られます。

正殿内の中央に祀られるのが、太陽の神格化である太陽星君です。

なぜか仏教の伽藍神の様式の韋駄と関雲長が配されています。

その横にも太陽星君。

反対側には月の女神嫦娥である太陰星君が祀られます。

正殿の左右の壁には、千手観音と普通の観世音菩薩。それに十八羅漢と、おそらくは千手観音の眷属である二十八部衆です。

中央のすぐ後ろにはまた太陰星君。

その左右にどなたかわからない神様たち。下の画像の右奥にいるのは硬鞭を持っているので太陽星君ではなく王天君だと思います。

門神は鄭倫と陳奇の哼哈二将。仏教の金剛力士をパクったものです。