日本国内で最大規模の道教廟は、横浜でも神戸でも長崎でもなく埼玉県にあります。埼玉県坂戸市の聖天宮は、台湾人の康國典さんが建設した廟です。
埼玉県の農業地域とはいえ、日本国内にこれだけ広大な土地を購入し、これだけ荘厳な廟を建てた康國典さんはどのような人物か?調べてみると、どうやら台湾で広く行われている占いの一つ紫微斗数の継承者だったそうです。
聖天宮の公式アナウンスによれば、康國典さんは40代に大病をして医者には治せず、三清にお祈りをしたところ健康を取り戻すことができました。そこで三清の神威を広めようと廟を建てるため、場所探しをしたところ、坂戸市に廟を建てよというお告げを受けました。そこで坂戸市に15年の年月をかけて聖天宮をつくりあげたそうです。
聖天宮には、東武東上線若葉駅で下車します。
改札を抜けたら東口方面へ。
駅から伸びる横断歩道をまっすぐ歩いていきます。
横断歩道から降り、マクドナルドの方向へまっすぐ。
およそ20分ほど歩いていくと、突然廟が見えます。
想像していた以上に大きな廟です。
牌楼の左側にある受付で拝観料500円を払って入ります。
前殿の龍門、虎口の横には見事な龍と鳳凰の石刻壁画があります。
龍門をくぐって廟内へ。
道教文化に馴染みがない日本人に向けて解説をしてくれるのが親切です。
これが前殿の八卦天井。前殿にまでこうした天井を設けているのは台湾でも珍しいです。
天井や梁などにも装飾があるのは台湾の廟そのもの。
前殿の龍柱。廟の建築から、これらの装飾、彫刻などもすべて台湾から職人さんを呼んで作ってもらったそうです。
正殿へ向かう廊下にも道教にまつわる壁画。
主祭神は、玉清元始天尊、上清靈寶天尊、太清道德天尊の三柱からなる三清道祖。時代の変遷によって玉皇大帝が最高神となった道教では、三清はいわばご隠居というか顧問のような立場です。ゆえに三清が主祭神とされる廟は非常にめずらしいです。
三清の前には聖天宮では四聖大元帥。一般的には四大護法元帥。
手前が至德真君殷郊、後ろが玄壇真君趙公明、さらにその奥が南斗星君。
こちら側手前が豁落靈官王天君、後ろが華光大帝馬靈耀、その奥が北斗星君。
殷郊が青、趙公明が黒、王天君が赤、馬靈耀が白でそれぞれ五色に配当されます。黄色は中央で帝王の色なのでありません。
そして正殿の天井。こういう螺旋状の天井は、他には三峽祖師廟でしか見たことがありません。
正殿の横にも三清が祀られます。
廟の左右にある鼓楼、鐘楼に登ることができます。
登ると周囲の農地を見渡せます。
どうやら自動で鳴らすシステム。
こちらは鼓楼からの眺め。
屋根の装飾の様子もよく見ることができます。
廟の横にある外苑。晴れていたらきっといい散策コースになるでしょう。
実は当初拝観料をとるという点に少し反感を持っていました。しかし実際に訪れてみて、まず廟の建築のすばらしさに触れ、宗教心が薄く、道教信仰への理解がまったくないと言っていい日本でこれだけのものを維持、管理するには、拝観料をとったりあるいはコスプレ撮影に開放したりということも必要なのだろうと考えを改めました。
そして、この外苑を見て、無頓着に開発する日本人にかわって少しでもこの地域の自然の景観を守ってくれるなら、喜んで拝観料をお支払いしようとも思いました。
鼓楼への登り口がある客庁には休憩室があって、自販機が置いてあります。この自販機では記念品や台湾のジュースなどが購入できます。
ということで泰山の八宝粥を買いました。
八宝粥は豆やハトムギなどが入った甘いおかゆです。
※2019年8月3日追記
TrySail 『Sunset カンフー』のロケ地として聖天宮が使われていました。