蘆洲湧蓮寺

蘆洲湧蓮寺は、新北市蘆洲にあるとても大きな寺廟です。ここはそもそもは仏教寺院でした。それをなんでこのサイトで取り上げるかはすぐわかると思います。

入り口を守るのは巨大な韋駄天。

こちらは台北ナビの記事には「関公」というキャプションが付けられてましたが、台湾のwikiによれば広目天です。中国仏教では伽藍の守り神として関羽と韋駄天の組み合わせがよく見られます。しかし、この像には「いかついおっさん」という要素以外には関羽らしさがありません。

主祭神は観世音菩薩。「観音仏祖」となっていないのがいかにも仏教寺院。でも、実は「仏祖宮」と呼ばれていたこともあるとか。公式サイトを見ても「観音仏祖」と書いてあります。

天井は道教廟の様式になっています。そこに卍がついているのは仏教ですよというアピールなのでしょう。

4階前殿には釈迦如来、薬師如来、阿弥陀如来の三宝仏。そして手前は「黄金観音」だそうです。建築様式はともかく、ここまでは表面的には仏教寺院であるように見せています。左側にいるのが伽藍神としての関羽ですね。

はい4階後殿には玉皇大帝に三官大帝。三官大帝の左右には太陽星君と太陰星君。ここから道教です。

高元帥と王元帥は、玄天上帝に属する三十六天将です。三十六天将は三十六天罡星とされることもあるようです。実際台北の玄天宮では三十六天罡星という名称で祀られています。ただ、天罡星といっても別に梁山泊の盗賊たちではなく、それぞれ別の神様があてられています。

王元帥は『封神演義』や『西遊記』に登場する王天君のことであり、五恩主の一人でもあります。

関羽は伽藍神とは別に関聖帝君としても祀られます。

文武財神。

太歳星君。

文昌帝君と魁星爺。

さてこの湧蓮寺。冒頭に書いたように仏教寺院でした。清代、浙江省の海に浮かぶ島・普陀山の秀隱寺から、中国人の及林和尚と日本人の大機和尚が観音像を携え、外地に教化に赴こうと船に乗ったはいいものの台風にあい、台北に漂着しました。そこで出会った商人が観音像に祈願したところ験があったため、お寺を寄進したのが始まりです。

道教色を濃くしていくことになったきっかけが、この延平郡王、つまり鄭成功にあります。

蘆洲一帯は泉州系の福建移民が多い地域です。ある時淡水の同じ泉州系の人たちが海賊に悩まされているということで助けに行くことになりました。しかし、その隙を狙って近隣の漳州系福建移民や客家人が蘆洲を狙ってきました。そこで延平郡王に祈ったところ、女性たちに男装させ、旗を掲げて太鼓を打ち鳴らせとお告げがあったのでその通りにすると助かったために、湧蓮寺に延平郡王を祀るようになったのだとか。

というのは伝説で、実際には日本時代になってからお寺を拡張したおり、後殿として懋德宮を増設し延平郡王を祀るようになったとのこと。

その後どうして半分以上道教成分で占められるようになってしまったのかまでは公式サイトにもwikiにも書いてはないのですが、延平郡王を祀ったのだから他の神様も祀ろうぜみたいなノリで道教の神様が増えていったという感じではないかと想像します。

というわけで、今では有名所の神様はだいたい祀られていますね。

今ではすっかり仏教の皮をかぶった道教廟になっています。

湧蓮寺に行くにはMRT中和蘆洲線の三民高中駅で降ります。道に案内板が出ているのでそれに従っていけば歩いて10分程度でたどりつくでしょう。