北巡代天宮

代天宮というのは天帝にかわり地上を巡察し、魍魎・瘟疫を討つ役割=代天巡狩を行う神様「王爺千歳」が祀られる廟を表しますが、まんま「代天宮」を名乗る廟は意外と少ないです。

この廟に祀られているのは「五年千歳」。これは瘟神信仰から発展した神様だそうです。瘟神は疫病をもたらす悪神で、日本で言えば疫病神、祟り神です。日本でも祟り神を奉り、祟りを起こさないように請願するという信仰を経て強い力を持つ神様として信仰されることがあります。天神様や平将門公などはその典型です。それと同じような転換が起こったわけですね。

五年千歳は中国では周の武王を補佐した武将・克殷のことであるという説があるようですが、台湾では十二支それぞれに応じた王爺であるとか、あるいは中国史上の13人の英雄であるとする派閥がいろいろあり、十二支にあたる王爺も派閥によって違うのでわけわかりません。とにかく天帝に代わって地上の霊的空間の悪を討つという神様です。

ただこの廟、太子宮って名乗ったほうがいいんじゃないかっていうぐらい中壇元帥だらけなのです。手前の剣を持った中壇元帥は珍しいですね。これはおそらく西遊記のほうで使っていた斬妖剣と砍妖刀ではないかと思います。

こちら側の中壇元帥が持っているのはたぶん降妖杵。

で、お供えをするテーブルの上にも中壇元帥。ボールやミニカーが備えられているのは、中壇元帥が少年神だからです。

五年千歳には中壇元帥も入るという系統もあるそうなので別に問題ないとは思いますが、じゃあ真ん中に鎮座している像はどなたなのよ?という疑問もわきます。

まあしかし、道教に対して細かい疑問をもってはいけません。

申し訳程度に関聖帝君や福徳正神もいます。右側にいる右手を振り上げている像は、宋代の禅師・済公。破戒の風狂僧として知られます。本邦の一休禅師の先人的な人です。どちらも臨済宗ですしね。ただ、風狂というのは「こうあるべき」という固定的な考え方を否定する禅の思想から生まれたポリシーがある行動であって、今のポリシーなく流されて戒律を守らない坊主どもとは根本的に違います。

しかし、済公が道教の廟に祀られているというのはどうやら禅師としての功績からではなく、後から創作されたフィクションからであるようです。要するに平安時代のただの占い師であった安倍晴明が、後のフィクションでなんか偉い呪術者のように思われているというのと同じです。

太歳星君と地蔵王菩薩。地蔵王菩薩が乗っているのは、虎の頭に犀の角、犬の耳に龍の体、獅子の尻尾に麒麟の足という中国の霊獣「諦聴」。諦聴が地蔵王菩薩の乗騎であるというのは、当然のことながら中国で作られた設定です。

虎ちゃん。こういうところに祀られているのが虎爺だと知らなければ犬だと勘違いしそうな像ですね。犬が神様として祀られているところもないではないんですけど。

この廟は中山区にあるのは確かですが、説明が面倒くさい場所にあるので書きません。旅行者だったらまず行くはずがないだろうという場所にあります。