行天宮は台北最大の関帝廟であり、別名は恩主公廟。恩主信仰に連なる廟です。日本では行天宮の前の地下道にある占い横丁がクローズアップされて、行天宮はそのおまけみたいな扱いになっているのが非常に気に入らないですね。
もともとは覚修宮より五恩主の分霊を受けた廟で、覚修宮が呂恩主=孚佑帝君を主祭神にしているのに対し、関恩主=関聖帝君を主祭神として祀ったのが始まり。沿革を見ると現在の場所に落ち着くまでに何度かの引っ越しをしています。
行天宮の発展に尽力されたのが、元は炭鉱夫であった黃欉という人で、この方は行天宮では「玄空師父」という法号で崇められています。正殿左側の部屋には玄空師父の写真が掲げられています。
主祭神の関聖帝君を中心に、呂恩主孚佑帝君、張恩主司命真君、王恩主豁落靈官、岳恩主精忠武穆王も祀られています。
関帝廟なので左右には関平と周倉。
これは行天宮名物の「収驚」というお祓いの一種。何かに驚いてどこかへ行ってしまった魂を体に戻してあげるというものです。魂がどこかに行ってしまった人がそんなにたくさんいるはずがないとは思うのですが、タダで受けられるというお手軽さからか、いつも行列ができています。
収驚は行天宮の他、指南宮などでも行われています。もともとは道教の儀式ではなく、より古いシャーマニズムに源流があるようです。
沖縄にも、何かに驚くと魂(沖縄の言葉で「マブイ」)を落とすという考え方があり、それを元に戻す「マブイグミ」という儀式があります。
どちらかというと中国発祥の文化がそれぞれ伝わったというよりは、東シナ海周辺のどこかで発祥した古代文化が人の移動とともに沖縄や台湾に伝わり、今に残っていると考えたほうがよさそうです。
礼拝の仕方の説明。ここまでしっかりやっている人はあまりいませんけど。
最近台北では環境に配慮して線香の数を減らす廟が増えていますが、行天宮では線香そのものを廃止しました。また、玄空師父が貧困者援助や災害支援、学習補助などに力を入れてこられたのを受け継ぎ、社会貢献にも力を入れています。
もっとも、日本とは違い「布施」の意味が正しく認識されている台湾では、宗教団体が社会貢献に力を入れるのは珍しいことではありません。