法主公廟は、大稻埕三大廟の一つ。南京西路を圓環を超えて西に行ったところにあります。道側から見るとただのビルのようにも見えるのはこちら側が北側だからです。
裏側というか、廟的にはこちら側が表側ですが、南にまわると廟であることがわかります。ただ、こうしたビルそのものが廟になっているのは珍しいですね。
入り口は左右にある階段、もしくはエレベーターで。
主祭神は法主聖君。本名は張慈觀ということで、もしや張天師の一人かと思い調べた所そうではなく、どうやら実在の人物ではないようです。
台湾の道教廟の多くに中壇元帥をリーダーとした五営将軍、もしくは五営神将が祀られています。その組み合わせは、中壇元帥以外は宗派によって異なります。正一教系の五営将軍の中には「張元帥」が加えられており、その「張元帥」がこの法主聖君だとか。台湾道教の主流をなす正一教閭山派のそのまた分派である烏頭派で祖師として崇められる神様で、福建茶商の守り神でもあるそうです。
もともとは鉄観音茶の名産地として知られる安溪の茶商・陳書楚さんが、中国の廟から分霊を受け、自分のお茶屋さんに祀っていたのが始まり。1878年に大稻埕に疫病がはやったおり、法主聖君に祈願したところ静まったので、寄進を受けて廟が建てられました。この点は萬華の青山宮と似ています。
現在のビルになったのは1996年。台北市が道路を拡張するということで立て直されました。
左側には東嶽大帝。またの名を泰山府君。地獄の裁判官十王の一柱で、『封神演義』的には黄飛虎が封神された姿です。
そして右側に張天師。つまり五斗米道の創始者・張道陵です。確かに法主聖君が張天師の後代なら、始祖より重く祀られるのはおかしいことです。創作された神様だからこそ張天師を従えることができるわけですね。
五営将軍的には張元帥の上司である中壇元帥を従えているのはどういうことなんでしょうか?まあ、道教にそういう細かい矛盾を問うても仕方ないんですが。
龍柱が豪盛です。これは実際柱として機能しているものを装飾しているというより、廟としての体裁を整える飾りという感じがします。
南側の壁面は彫刻で埋められています。
3階は太歳殿となっており、斗母元君と60太歳神が祀られています。
その左側には武財神趙公明。趙公明も台湾では人気の神様です。
右側には観音仏祖。
4階に登ると三清が祀られています。
4階の階段にあった石刻。渭水聘賢は、周の文王が渭水で釣りをしている太公望を迎えに行くところです。
最上階の5階には玉皇大帝。建前上三清より位が下のことになっている玉皇大帝が、三清より上に祀られているのは珍しいです。
北側から見ると謎の建物ですが、その実普通の廟なのでお参りしてみてはどうでしょうか?