北星寶宮

虎山親山歩道は途中でいくつかのルートに分かれています。私が2017年の1月8日に歩いたのは、googleマップで見て特に廟が多いルートでした。そのルートの最終地点にあるのが北星寶宮です。ここは象山に入っているようで、後で調べたところ象山側から登るルートもありました。

主祭神は四神のうち玄武が人格神にされた玄天上帝。退魔神としても信仰されています。

天公炉の向こうに見える山のほうからずっと歩いてきました。でも、途中何箇所もお参りと撮影をしながら来ても、スタート地点からせいぜい1時間半ていどの道のりです。

太歳殿の斗母元君。

私が外のバーナーで線香に火を付けていると、奥からおじさんが出てきて正殿にある太鼓をぽこぽこ叩き出しました。なにかの練習か、もしくは一定時間ごとの決まりなのかと思って気にせずお参りしていたら、私が一通りお参りを終えたらやめたので、どうやら参拝者がくるとやることになっていたようです。

天上聖母。

正殿の外には五営将軍の祠があります。ただ、これがちょっといろいろ謎でした。

五営というのは東西南北中央それぞれの軍営のことであり、それぞれの営を指揮するのが五営将軍です。哪吒が中壇元帥と呼ばれるのは、そのうち中央の壇を守っているゆえです。五営将軍の組み合わせにはいろいろありますが、哪吒が中壇元帥なのはどの系統でも変わらないようです。

台北で一番多く見られる五営将軍の組み合わせは、張・蕭・劉・連・李。張は法主真君張其清、蕭は蕭其明、劉は劉其秀、連は連其亮、李は当然李哪吒。法主真君は正一教の閭山派が崇める神です。蕭其明は法主真君の義兄弟、蕭其明と連其亮は閭山派の道士です。中壇元帥以外は閭山派で固められた閭山派のための組み合わせになっています。

ただ、五営将軍は閭山派のオリジナル設定ではないので、他派、他宗だと別の設定もあります。

さてこの廟の五営将軍。まず李元帥は中壇元帥です。趙元帥は趙公明。で、楊元帥。これが誰かがよくわかりません。ここは玄天上帝の廟なので、玄天上帝麾下の三十六神将で調べると、楊彪という名前があります。これは後漢末に董卓の長安遷都に逆らった硬骨漢です。でもこの人槍持って戦う人じゃないですね。

三十六神将にもいろいろ組み合わせのパターンがあって、哪吒が入る設定と入らない設定があります。

他に「楊元帥」で調べると、楊府元帥として「楊無敵」楊業がいるようです。これは王爺千歳のほうの設定ですが、五営将軍に入っても不思議なことはありません。

もう一人、顕聖二郎真君説もあります。二郎真君は『西遊記』では「楊二郎」だし、『封神演義』では「楊戬」です。この並びを封神演義つながりと考えると、哪吒、趙公明、楊戬ともに登場するので収まりがいいです。それに、三尖刀こそ持っていないものの、二郎真君の特徴の一つである第三の目らしきものもあります。

で、この雷元帥。これは雷震子ですね。雷震子のビジュアルイメージは本来こうした半鳥半人のガルーダというか、仏教に取り入れられてからの迦楼羅天に似た姿です。

ところが問題なのが最後の一柱。

康元帥。康妙威という名前ですが、この人は封神演義には登場しません。ただ、三十六神将には入ってます。

ということでですよ、どうも封神演義と三十六神将のちゃんぽんで並べてあるみたいです。この組み合わせはこの廟のオリジナルみたいですけど、中央に中壇元帥さえ入っていればあと残りは誰でもいいんでしょうね。