蘆洲の湧蓮寺の近くにある廟で、2016年に新北市から古蹟指定されたばかりです。
私がお参りしたときは正殿が修繕中でした。
ということで、主祭神の保生大帝は仮正殿に祀られていました。
この廟の創建は1910年。日本が台湾を領有してから15年しか経っていません。蘆洲の貢生・李樹華さんが資金を集め廟を建てようとしたところ総督府に許可されず、再三にわたって申請を行いやっと建設が許されたのだとか。貢生というのは科挙受験を目指すための学校である国子監の優等生のこと。ただ、今の大学の優等生みたいなのとは違って、この時点ですでに官職を得られます。
正殿配神として太上老君と中壇元帥。中壇元帥はともかく、太上老君のような偉い神様がなんで配神扱いなのかはわかりません。太上老君が最上級の神様なのは道教共通設定のはずですが。
そして三十六天将。玄天上帝の配下である三十六天将がなんで保生大帝とともに祀られているのでしょうか?
保生大帝は天帝から賜った宝剣を持っており、ある日玄天上帝が魔を討つためにその宝剣を借りに行ったものの断られました。そこで、玄天上帝は三十六天将を担保として保生大帝に預け、やっと宝剣を貸してもらえたなんていうお話があるそうです。神様なのにひどいエピソードを作られたもんです。
ここにまだ三十六天将がいるということは宝剣を返してないってことですね。でも玄天宮ではちゃんと玄天上帝のもとに戻ってるんですけどどっちなんだ。
修繕中なのは正殿だけで、左右の副殿には入れます。
文昌帝君、関聖帝君、孚佑帝君、朱衣星君、魁斗星君。この組み合わせのときは、文神戦隊五文昌です。
太歳星君。六十柱は手抜きぎみに写真が飾られていました。
こういうお祭りのときに人が入って街を練り歩く人形を「大仙尪仔」とか「大仙翁仔」と言うそうですね。こちら側は趙公明、顕聖二郎真君、岳飛、孫乙元帥、王孫元帥。孫乙元帥と王孫元帥については誰のことやらって感じです。
こちら側は康、温、高、孟、馬、殷元帥。殷元帥は紂王の長男である殷郊のこと。もちろん実在の人物ではなく『封神演義』で作られたキャラクターです※追記により訂正:殷郊は『封神演義』より以前に創始されたキャラクターで、後に『封神演義』に取り入れられました。
斉天大聖すら神様として祀られているくらいですから問題ないのです。道教には実在の人物の神格化も多いけれど、架空のキャラクターも多いです。それは創作されたのが早いか遅いかの違いでしかありません。
この前の道を左に真っ直ぐ行くと湧蓮寺があります。ていうかこの道から湧蓮寺の巨大な建物が見えます。