龍虎塔

高雄市の中心より北にある左営は町の中心に蓮池潭という池を湛えます。蓮池潭の主に西岸側は、大量の道教廟が立ち並ぶ地域です。蓮池潭周辺の廟めぐりをしたのは2017年6月のこと。2017年のうちにそれらの廟の記事を書きたいと思っていたところ、仕事が忙しくなり手がつけられなくなってしまいました。1年近く経った今、やっと時間ができたのでこれから少しずつ左営の廟を紹介していこうと思います。

実際には、蓮池潭周辺巡りは台湾高速鉄道の左営駅を起点とし、蓮池潭の北側から順にお参りをしていきました。蓮池潭の南にある龍虎塔へは最後に行っています。ただ、やはり左営のシンボルといえば龍虎塔なので、最初に龍虎塔をとりあげたいと思います。

実はこの龍虎塔は、道路をはさんで正面にある慈濟宮という廟の附属施設です。1974年、慈濟宮で祀る保生大帝のお告げにより建てられたというのが龍虎塔。本来ならば慈濟宮とともに紹介すべきなのかもしれませんが、ここではあえて別々に記事を作っています。

龍虎塔には龍の喉から入って虎の口から出ます。こうすることでいわば厄除けの意味になるとか。実は通常の廟でも龍門から入って虎口から出るのは同じです。

龍虎それぞれの後ろに塔がそびえます。

龍虎塔は慈濟宮の附属施設ですから当然宗教施設です。龍の内部には十殿閻羅が統べる地獄の様子が描かれています。


悪いことをすると地獄へ落ちてひどい目にあうということを子供に教えるのは大切なことです。今の日本人がまるで中国人のように道徳心が薄れていっているのは、こうしたことが中国と同様に否定されていっていることもあるのではないかと思います。

龍の胎内の地獄めぐりの最後には地蔵王菩薩。地獄に落ちたときの救済を願ってお参りします。

龍のしっぽから塔内へ。この螺旋階段を登っていきます。

壁面には三十六天将が描かれています。右は康元帥、左は楊元帥。康元帥はもともとどこかの土地神で、東岳大帝の配下という設定もあるようです。楊元帥は顕聖二郎真君。『封神演義』で作られた設定をもとに楊姓になっています。やたらでかい哮天犬をつれていますね。

こちらは右が岳元帥、左が鄧元帥。岳元帥は言わずと知れた岳飛です。鄧元帥は九天応元雷声普化天尊の配下の雷神。

最上階は立入禁止になっているため、登れる一番上(確か6階)から見た眺めです。正面に見えるのが慈濟宮。通路がギザギザになっているのは、魔物はまっすぐにしか進めないと考えられているため、その侵入を防ぐためです。

蓮池潭を望みます。奥に小さく見えるのは巨大玄天上帝像です。

塔から出ると龍と虎のお尻部分。虎の方の塔は疲れたので登りませんでした。

虎のお尻から入ると、まず孔丘の像。孔丘は好きじゃないのでスルーします。


こちらの壁面には顔回や冉求、南宮括などの儒者、許由など儒教で聖人と讃えられる人物などが描かれます。


反対側の壁には三十六天将。李元帥は李哪吒、つまり中壇元帥。殷元帥は紂王の王子の殷郊。ただ殷郊という人物は実在せず、後世に創作されてそれが『封神演義』に取り入れられました。

三十六天将はもともとは玄天上帝の配下です。ただこの龍虎塔は保生大帝を祀る慈濟宮が建てたもの。実は玄天上帝が保生大帝が所有する宝剣を借りるために三十六天将を保生大帝に質入れして行ったという話があり、例えば他に同じく保生大帝を主祭神とする蘆洲保和宮にも三十六天将の像があったりするので、保生大帝側からするとまだ宝剣は返されていないということになっているようです。

虎の口から出て龍虎の胎内巡りは終了です。

画像の整理をしていたら、2002年にここを訪れたときのものがありました。こちらのほうが色がくすんでいるので、最近塗り直されたのでしょう。